「楽しく一緒に気分よく」

国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

文字サイズ変更



卓話

2023年9月

卓話『世界幸福度ランキング6年連続世界1位の国フィンランドのライフスタイル』令和5年9月25日

日本とフィンランドの架け橋 ラウラ・コピロウ様

日本とフィンランドの架け橋 ラウラ・コピロウ様

わたしはフィンランドのエスポーという首都圏で生まれ、高校の時に函館の白百合学園に1年間留学をしたことがきっかけで日本が好きになり、早稲田大学の政治経済学部に留学をしました。その後日本の国費留学生の奨学金をいただいて北海道大学大学院で勉強をして楽天株式会社に新卒で入社し、デジタルマーケティングを担当しました。現在はフィンランド大使館商務部でファッション・ライフスタイルを担当しています。

皆さんはフィンランドに行かれたことはありますか。一昔前はフィンランドといえば、サンタクロース、ムーミン、オーロラというイメージが強くありました。現在は6年連続世界幸福度ランキング1位、そして3年連続SDGsの達成度ランキングが1位で、人権、人を大切にする数字が高く評価されています。またフィンランドは森と湖の国で、わたしの実家の近くにあるヌークシオ国立公園は2004年に上映された映画かもめ食堂のロケ地になりました。そして案外知られていませんが、ただ寒いだけの国ではなく四季があります。春は新緑が綺麗で、非常に短い夏は日本の桜と同じように儚い気持ちになります。秋になると紅葉も綺麗ですが、雪が降る冬よりもオーロラが綺麗に見えます。

フィンランド人は昔から家に長時間居て、おうち時間を楽しんできました。いかに快適に自分らしく過ごそうかと考えた結果、フィンランドのインテリアが発展してきたのではないかと思います。PENTIKやIittalaなどのブランドは毎日を幸せにしてくれるアイテムとして生活に馴染んでいます。デザインの国として知られているフィンランドですが、実際は毎日を特別にしてくれるデザインの国だと思っています。特別な日のためのデザインではありません。病院や学校などでもArtekというブランドの家具が普通に使われていて、みんなに豊かな暮らしと幸せをという思いが込められています。それが非常にフィンランドらしいと思います。また四季があり自然と共存できるため、窓から見える景色とインテリアを一体化させたいという意識が強く、フィンランド人の半分はインテリアの衣替えをしています。季節によってテーブルクロスやクッションカバーなどを変え、暮らしに重点をあてて毎日の小さな幸せを積み重ね、大きな幸せを実現できるようにしています。天然素材のインテリア雑貨も多く、本能的に気持ちいいいと感じるデザインや有機的なフォルムも多くあります。フィンランドにはたくさんのパターンがありますが、それはたまたま生まれたのではなく、豊かな自然の景色にインスパイアされてテイクスタイルに起こすことが多く、北欧ならではのパターンは自然が近くにあるということが元になっているのだと思います。

しかしやはりデザインは人のために作られているので、一番は機能性です。IittalaのTeemaというシリーズは非常に使いやすく、また世界一のサウナメーカーであるHARVIAではデザインと機能性の両方を重要視して作っており、使いやすくて無意識に気持ちよくなるものが多いです。

自然が豊かな国というイメージが強いフィンランドですが、もちろん都会もあれば企業もあり、誰でも起業できる環境が整っています。シェア幸福度が高くワークライフバランスがいい人材がいること、そして何があっても安心できる、落ちこぼれを作らない社会が成り立っているからこそイノベーションが起こせるのだと考えています。また無償で大学まで行くことができ、それはもちろん税金が高いという背景はありますが、人が資源だと考えているフィンランドならではだと思います。

6年連続世界幸福度ランキング1位というと、幸せ=休むこと捉えられたりもしますが、経済と幸福度が両立していて、残業もほぼなく、有給消化率もほぼ100%で、GDPは1人当たり1.5倍となっています。もちろん忙しい時は残業もしますが、ワークライフバランスが良く、仕事も休みも同じくらい大切にしています。また企業よりも自分のためにと考えている人が多いので、大体5年で転職をします。わたしの親世代などは日本と同じようにバブル時代があり、すごく売り手市場であったので、ずっと同じ職場でという人ももちろんいますが、最近ではいい大学を卒業してもまったく武器にならず、また大手企業にいることにもそんなに価値がないので、企業よりも自分のために転職をする人が多くなっています。

評価制度は若干日本と異なり、プロセス評価ではなく成果で評価しています。コロナの前からリモートワークが浸透しており、どんな結果を出すかということで勝負をしています。それはフィンランドが人と人との相互信頼度が非常に高い国だからだと思います。人と政治家も同じで、税金が高くても信頼があるから払いたいと言っている人が多くいます。

またフィンランドは議論の進め方が面白く、自分の考えていることをはっきりと言うことが良しとされています。しかし議論はするけれどもそれは人対人ではなく意見がぶつかっているだけという考え方なので、議論をした後でも仲良くできます。また組織は非常にフラットで、肩書よりもどのような意見を持っているか、どのようなことができるかが重要視されます。

フィンランドではなぜ自分の意見をはっきりと知り、どのように就職をしたいかということを若い時から考え、準備をするのでしょうか。それは、教育の中でずっと「あなたはどう思いますか」と聞かれるからです。勉強でもインプットするだけではなくアウトプットすること、自分の意見をはっきりと伝えることが求められており、自分がどう思うか、自分の意見が問われる教育なのだと思います。

日本に13年住んで、フィンランド人の幸せの基準は本当にシンプルだということに気が付きました。わたしの父の一番幸せな瞬間は「僕が作ったパンをみんなが食べて、美味しいと言ってくれること」です。毎日を大切にしているということはフィンランド人のマインドセットですが、しかしこれはフィンランドに行かなくてもできるマインドセットなのではないかと思っています。

天気が良くてご飯が美味しくて大切な人がいる、そして心地よい暮らし。それがフィンランド人の幸せです。

本日はありがとうございました。

卓話『皇室外交よもやま話』令和5年9月4日

東京六本木ロータリークラブ 苅田 吉夫会員

東京六本木ロータリークラブ 苅田 吉夫会員

まず今回の平成から令和へのお代替わりの感想。内外の要人2000名が参列し見守る中で新しい天皇皇后両陛下が歴史的な装束で高御座と御帳台にお登りになり、皇族方も同じく古式豊かな装束で周りにお立ちになり、陛下が即位を内外に宣明する詔をお読みになる。昔の絵巻物を見るような優雅で美しい式典だった。

新たに即位された天皇陛下は実に颯爽としてご立派で、皇后陛下も終始本当に晴れやかな笑顔で、お二方ともたちまち国民の心を掴まれたと思う。それから3年、新天皇、皇后陛下は国民の中ですっかり定着してこられたようで、喜ばしく思っている。

今回のお代替わりで特筆すべきことは生前御退位。歴史上は10回ぐらいあったが。明治以降、皇室典範では生前ご退位の規定は設けられず、当然のこととしてご逝去をもって御代替わりが行われてきた。

今回は天皇陛下ご自身が生前ご退位の意向を示され、国民の多くは長い間ご苦労された陛下のご意向を支持したので、政府もその方向で検討を進め特例として決定された。

結果的には生前御退位の決定はとても良い結果をもたらした。新天皇は早い時期に即位されたことにより、これ以上長い皇太子の時期を過ごすことなく天皇の地位を継がれて内外で活動されており、平成天皇は厳しい任務を離れて伸びやかな日々をお過ごしである。両方のお姿を見て、ああよかったなあと感じる今日この頃である。

上皇さまは戦争が終わった時小学生で、昭和天皇が戦後の激動の時期を経て、平和憲法の下での象徴としての新しい天皇のあり方を徐々に模索し実現されていくお姿を見ながら成長され、ご本人も長年かけて新憲法の下での象徴天皇のあり方をじっくりと考えてこられたものと思う。

その形が常に国民とともにあり国民の幸せを祈る存在としての天皇。昭和時代と比べ国民との接触の機会が飛躍的に増えた。積極的に国内を回られ、各県2回以上。天災や、身体障害者へのご配慮も細やかであった。

膝をついて同じ目線で話される。初めの頃は違和感を持つ人もあったが、時と共に国民に受け入れられた。開かれた皇室、国民との距離がずっと縮まった象徴天皇の姿を30年間ずっと貫かれ、今となってみるとすっかり世の中に定着したと言える。国民の大部分は新しい象徴天皇のあり方を受け入れ、国民に支持される皇室になった。

私は宮内庁に出向して天皇陛下にお目にかかって以来常に、陛下が真摯に、心を込めて天皇としての任務に専念され、緻密すぎるぐらい細かい点についても疎かにせず、じっくりと考えて結論をお出しになる姿に常に深い感銘を受けていた。

浩宮様、現在の天皇陛下はそれまでのしきたりであった保母や保育官の廃止を特に皇后陛下が強く求められ、ずっとご両親のもとで育てられる方式に改められた。そのせいもあってか素直でまっすぐで思いやりのあるご性格に成長された。

平成天皇陛下の下にあって、皇太子時代は比較的目立たない存在。皇太子の役割はそのようなもの。いつももの静かでニコニコ微笑んでおられた。控えめの中でもしっかりとしたお考えをお持ちで、きちんと皇太子の役割を果たされた。

平成から令和への移行では象徴天皇のあり方については前提陛下の歩まれた道を殆どそのまま受け継がれ、きちんとその務めを果たしておられる。

皇后陛下はハーバード、東大、オクスフォードと世界の三大大学で学ばれ、外務省で活躍された才媛で、理想的な皇太子妃であり、みんなに祝福されてご成婚が行われたが、お世継ぎ問題などでの御辛労からか長い間健康が優れない状態が続いていた。最近はかなりご回復のご様子だがなかなか御全快の発表がない。皇后になられたらきっと御全快されると信じていたが、最近の生き生きとしたご活躍ぶり、心からの笑顔を拝見するとご全快発表の日も近いと思われる。お疲れになりすぎないように宮内庁も心を配っている。

平成の即位礼の思い出に戻るが、何事もスケールが大きいことに驚きつつ必死に準備を行った。式典に出席する150カ国以上の元首以下の賓客の席順から2800人を5回に分けて饗宴する食事の席順。最終的な案がまとまり、どこからもクレームが出なかった時はホッと胸をなで下ろした。

外国の来訪者や記者団を驚かせたのは200を超える車列を見事に整理して、1分刻みで宮殿に発着させる手際の良さ。これには各国出席者も例外なく舌を巻いていた。

信任状捧呈式は赴任してくる在京大使にとっては最大の最初のイベント。皇室では信任状捧呈式のあとお茶会、午餐会、園遊会、新年祝賀、天皇誕生日。伝統行事(鴨猟、長良川、御料牧場)など全大使が出席する行事が非常に多い。

平成天皇の最初の外国ご訪問はタイ、マレイシア、インドネシアご訪問。翌年は中国ご訪問。その後、ブラジル、アルゼンチン、英国、オランダ。北欧、東欧などお立ち寄りを含め17カ国のご訪問に携わった。多くの思い出があるが別の機会に譲りたい。



▲ PAGE TOP