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国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2022年4月

卓話『Luxury Market Overview LVMH in Japan』令和4年4月4日

LVMH モエヘネシー・ルイヴィトンジャパン株式会社代表取締役社長 ノルベール・ルレ様

LVMH モエヘネシー・ルイヴィトンジャパン株式会社代表取締役社長 ノルベール・ルレ様

世界のパーソナルグッズの市場規模は、1996年から現在まで、二十数年の間に4倍に発展しました。現在の市場規模は約38兆円です。2020年にはコロナで市場規模がずいぶん落ちましたが、2021年には2019年のレベルまで戻り、非常に元気なマーケットです。

LVMHは1987年の設立で、ワイン&スピリッツ、ファッション & レザーグッズ、パフューム & コスメティクス、ウォッチ & ジュエリー、セレクティブ・リテーリング, その他のSix divisionでやっているグループで、メゾンは70以上入っています。

主なメゾン

ワイン&スピリッツ 1365年に設立されたクロ・デ・ランブレイに始まり、ドンペリニヨン、モエ・エ・シャンドン、ヘネシー、ヴーヴ・クリコ、シャトー・シュヴァル・ブラン、クリュッグなど、だいたいメインはシャンパンとコニャックヘネシーとワインです。最近ではウイスキーにも力を入れており、また富山県で蔵を作って、日本酒も始めることになりました。

ファッション & レザーグッズ 最も有名なLouis Vuittonをはじめ、Dior、Fendi、CELINE、LOEWE、BERLUTI、KENZOなどが入っています。

セレクティブ・リテーリング メインの会社はSEPHORA、パリにある百貨店LE BON MARCHÉ RIVE GAUCHE、DFSは沖縄にもギャラリアという名前で入っています。

パフューム & コスメティクス メインはPARFUMS CHRISTIAN DIOR、そしてGIVENCHY、GUERLAIN、KENZO PARFUMSなどがあり、1803年に設立されたOFFICINE UNIVERSELLE BULYは、去年の11月に買収をしたフランスの伝統的な会社です。

Other Activity カフェのCOVAをはじめ、クルーズの会社も持っています。パリの郊外にあるナポレオン3世の時代に作った遊園地JARDIN D’ACCLIMATATIONや再開発したばかりのSamaritaine百貨店、高級ホテルのビジネスもしています。

ウォッチ & ジュエリー CHAUMET、TIFFANY & CO.、TAG HEUER、ZENITH、BULGARI、FRED、HUBLOTなどが入っています。TIFFANY & CO.はご存知のようにアメリカの会社ですが、去年の1月にグループに参加をしました。

ベルナール・アルノーはグループを作ったわたしたちのCEOです。アルノーがグループを考えた時のビジョンは、明日、来月、今年のことは気にせず「長期的」ということでした。アメリカで活躍をしていたアルノーは、フランスにあるDiorを所有する繊維会社ブサックを買収し、当時の長期的なビジョンを一切変えずに続けてきました。scientificな方なのですが、もし生まれ変わったらどうしたいかと聞かれた時の彼の答えは「architect」ビルディングデザイナーと答えています。わたしたちの仕事はブティックを作る事で、最近の例としては、大阪御堂筋のLouis Vuittonで、ファサードデザインは日本の有名な建築家の青木淳先生です。わたしたちがブティックを作るときは、ビジネスのためではなく、その土地の歴史や町とのハーモニーを考えながら建物として残すために作っています。もう一つの例として、皆さんご存知のように銀座は元々海でした。これを受けて銀座並木通りのLouis Vuittonは波のような形で作られています。

ブランドビジネスは社長やCEO、デザイナーによって変わりますが、わたしたちは長期的なビジョンの成長をファミリーとして行っています。上場企業であり会社の66%を持っていますので、非常に安定をしている会社です。またヨーロッパにある会社としては企業価値が一番高く、お客様が長く残るような投資をしています。70社以上が入っているグループであり、中には歴史の長い会社もありますが、いつでも初心を大切にして勉強し、貢献し、モチベーションを上げていかなければならないと考えています。

売上の比率を見てみると、ファッション & レザーグッズ62%、ウォッチ & ジュエリー22%、次にワイン&スピリッツとパフューム & コスメティクス、最後にセレクティブ・リテーリングとなっており、やはりわたしたちの大きなビジネスユニットはファッション&レザーグッズです。地理別に2019年と2021年を比較すると、アメリカが24%から26%に上昇、地元マーケットのフランスは9%から6%、アジアは30%から中国のマーケット成長により35%に上がっています。日本は2019年も去年も7%とコンスタントな国で、経済が落ちているという話もありますが、わたしたちは日本の経済は強いと思っています。コロナで海外に行く方が少なくなり、コロナのルールを守りながら国内でお金を使うという流れができていると感じています。

FutureはFantasticです。わたしたちはこの会社で前向きにポジティブに考えています。子どもや孫の世代のための仕事をきちんとしなければなりません。1つの例として、毎年LVMH PRIZEの受賞者を選出し、賞金やLVMHグループの社長のMentorとしての役割を与えています。うまくいけば会社に資本協賛してもらえることで、ヤングデザイナーを応援できるような取り組みを行っています。

ビジネスと同時に文化やアートにも力を入れています。パリの郊外にあるFondation Louis Vuittonは、アメリカの建築家フランク・ゲーリーさんが作った建物です。エキシビションやデモンストレーション、コンサートなども行っており、パリにあるアートシーンとして非常に大事な場所となっていますし、表参道や御堂筋のLouis Vuittonにもアートのピースを展示させていただいています。また3.11のあと、子ども向けのアート展示を行ったり図書館が入って施設を、福島県相馬市に作りました。

わたしたちはモノを作る時、長く長く使っていただくことを考えています。わたしは先週TIFFANY & CO.の時計を買いました。いつか息子に受け継ぎ、息子は孫に受け継ぐと思います。このように長期的なビジョンを考えて作られたものを長期的なビジョンを考えて購入することで、モノを捨てずにSustainabilityを守ることにも繋がっていくのではないかと思います。

本日はご清聴ありがとうございました。

卓話『香りの道』令和4年4月11日

志野流香道二十一代家元後嗣 一枝軒 宗苾様

志野流香道二十一代家元後嗣 一枝軒 宗苾様

1478年、わたくし共志野流の初代がこの年に足利義政と香の会を行ったという記述が残っています。遡ると500年前から作法を一度も変えることなく続けてきました。

香道では香りを「聞く」と表現します。なぜ聞くというのか誰も教えてくれません。見て盗む、やらなければ分からない、やっていれば分かる、という世界です。わたしもお香を聞くということはこういうことかなと、なんとなくしか言えません。ただひたすら香りを通して自然界の声を聞き、その中で自分がなぜ生まれたのか、どうやって生きていくのかを教わり、そして最後は自分を知るということかなと最近気付きました。20代家元であるわたしの父は、いまだに朝から晩まで勉強をし日々香りと向き合っています。わたしも父の後ろ姿を見ながら、またお叱りを受けながら学んでいる最中です。

わたしは父まで一度もバトンを落とすことなく続けてきた家元の一番下にいて、勉強、努力の日々ですが、今まで気付かなかった20人の家元の重さが肩に乗った日がありました。ちょうど1年前の4月25日、京都の上賀茂神社さんで神事があり、特別な衣装、特別なお手前、特別な香炉、香木で初めてお香を届けさせていただきました。普段父が座っていた場所に座った時、涙が出てきました。こんなプレッシャーの中で神様に香りを届けるということを、たった1人で40年近くやってきた父。同時に歴代の家元20人の重さに気付きました。まだ父には長生きをしてもらい、見て盗んでいきたいと思いますが、ちょっとずつ時代の移り変わりもあるのかもしれません。

白檀、麝香、龍涎香、乳香、没薬など、世界には色々な香料がありますが、香道では香木1つ1つの香りを聞き分けることをします。500種類1000種類を聞き分けることで五感が鋭くなり、第六感、直観力、洞察力が身についてきます。感覚の扉を閉ざしている、忘れてしまっているわたしたちに、色々な感覚を蘇らせてくれます。

一番有名な香木は「蘭奢待」です。聖武天皇の時代に中国からプレゼントされたとあり、奈良の東大寺正倉院に収蔵されています。蘭奢待の漢字をご覧いただくと、東大寺という漢字が隠されているのがお分かりでしょうか。蘭奢待は別名「東大寺」とも呼ばれています。

蘭奢待は、当時の権力者たちがどうしても手に入れたいものでした。長い歴史の中で唯一切り取ったのが、志野流が香道をはじめたきっかけである足利義政、織田信長、明治天皇の3人と言われています。

ラオスやベトナムのジャングルの中に生息している香木、まだ全ては解明されていないと言われています。今わたしたちはコロナと戦い共存していますが、木はバクテリアと戦っています。折れた傷口からバクテリアが入らないようにするために自ら樹脂のようなもので固めます。その黒ずんだ部分がとんでもなくいい香りを放ちます。ということは、香木は健康な木ではありません。長い時間をかけた自然治癒力、自然に任せた偶然なのです。

お茶の流派はたくさんありますし、お花、能、狂言、歌舞伎、色々あります。しかし香道は流派も少なく、お弟子さんも多くありません。お茶とお花は毎年日本で栽培ができますが、香木は人間が作れない、国内で採れない、だから貴重です。香道は火加減が重要で、夏と冬では気温も湿度も違うので一筋縄ではいきませんが、自分の経験値で香木が持っている最高のパフォーマンスを出してあげます。煙を出さずに温め、香木が持っている本当の香りを優しく出してあげます。そして最後は心です。一生懸命心を込めてお手前をすると、いつもよりいい香りを出してくれます。中国では海南島や香港の近くのプランテーションで香木を作り始めていますが、人間の念が入った香木、香りはまだ天と地の差です。1+1=2ではないということ、人間が考えられる世界ではないということは、不思議なようで当たり前なのかもしれません。わたしたちは産業革命以降、モノ、モノ、モノと言って、目に見えるものが真実であると信じてきました。しかしこれからは目に見えないものが重要になってくると思っています。

今まで500年続いてきた香道を、わたしは新しい香道に繋げていこうと考えています。ただ単に香道ができればいいのではなく、たくさん自然の命をいただいてきた恩返しとして植林を行い、また東南アジアにプランテーションを作り、雇用を生み、皆が繋がっていけるような活動も考えています。日本に生まれて良かった、命をいただいて良かったと思えるような活動をしていきたいと思っています。

初代志野宗信からずっとバトンを繋いできました。わたしは家元になることに向き合うのにかなり時間がかかりましたし、父の後ろ姿を見ながら、まだ今歩いている途中です。またわたしが最終ランナーとしてゴールするわけではありませんので、子どもや孫が繋いでいくという長いスパンで考えており、日本だけではなく世界中の人たちが毎日幸せに笑顔で過ごせるような国づくり、地球づくりをすることが、わたしたち家元のひとつのお役目かなと思います。

お香の香りは本当に素晴らしいです。きっと笑顔になると思います。今後とも香道と志野流をよろしくお願いいたします。

本日はご清聴ありがとうございました。



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