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国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2021年11月

卓話『日本の生産性はなぜ低い?』令和3年11月8日

ドイツ日本研究所 所長 フランツ・ヴァルデンベルガー様

ドイツ日本研究所 所長 フランツ・ヴァルデンベルガー様

わたしは日本の経済を30年近くフォローしてきました。バブル後の悩みと回復、人口が減って成長ができない中で、やはり一番可能性が残っているのは生産性だと考えています。人口が増えなくても生産が上がれば成長は達成できます。生産性は日本の経済や社会にとって今の経済レベルを維持するために注目すべき課題であると考えています。優れた生産要素を持っていながらなぜ髙生産性に繋がらないのでしょうか。

OECDの統計から日本とドイツに注目をしてみます。日本の年間平均労働時間はOECD加盟国の中で真ん中あたり、一方ドイツは日本と比べると差が300時間以上もあり、ドイツ人は日本人より年間約2ヶ月間多く休んでいることになります。しかしドイツの1人当たりのGDPは日本より1万ドルも高い結果となっており、GDPの3つの要素である就業率、年間平均労働時間、労働生産性を見ると、日本のGDPが低い原因が労働生産性にあるのではないかということが分かります。

結果として日本には良くないですが、労働生産性のギャップには経済成長の可能性があります。ドイツやアメリカとの労働生産性の差を埋めることができたら、日本の1人あたりのGDPは少なくとも35%成長するというポテンシャルはあります。高齢化や人口減少に直面している中で、絶対に逃してはいけないチャンスです。

アメリカやドイツとの労働生産性の差は、2つの原因が考えられます。1つは資本が足りない、労働者の教育レベルやスキルが足りないといった、生産要素が不十分であることです。しかしそれは発展途上国の場合の1人当たりGDPの低さの大きな原因です。2つ目に、要素の配分や使い方が非効率的であることが挙げられます。日本の教育レベルは、高等教育学歴取得率がOECDの中で2位、スキルレベルは1位、さらに技術レベルを見ても悪くありません。教育レベル、スキルレベル、技術レベルを見ると上位にいますが、生産性が低いということは、生産要素の配分と使い方に原因があるのではないかと考えます。

日本の生産性はよく議論されていますし、アベノミクスの中でも一つの大きなテーマであったと思います。日本の問題点として、リスク対応や無形資産が少ないこと、人事制度や働き方、共同開発が少なく、国際取引が少ないといったことが指摘されています。内部昇進を前提とするキャリア形成が生産性の低さとどのような関係を持っているのかを分析したいと思います。

内部昇進は、同一企業の中で行います。内部昇進そのものは日本以外の国々でも一般的に行われており、一番簡単な昇進の在り方です。しかしドイツやアメリカでは社内だけではなく外部の労働市場も昇進の機会を提供しており、他社への転職や外部採用のチャンスがあります。日本では管理職が転職によってキャリアアップすることは不可能に近く、とりわけ日本の大企業のトップに立つには、わずかな例を除いて社内でキャリアを積んでいく方法以外にはありません。

日本の需要性で現れる局面はキャリアの入口である就職活動や一括採用です。企業側がコア人材となれる社員を選択するために採用にはすごく時間をかけることから、入口の段階で企業内でのキャリアアップを前提としていることが分かります。そして日本の管理職の転職率は1%と非常に低く、勤続年数と社内昇進でキャリアを上りつめた方がトップにいるのが通例ですが、ドイツやアメリカでは、CEOを外から採用するのは例外的ではありません。また日本ではCEOは転職をしませんが、ドイツでは転職をしていないCEOはわずか30%、アメリカは37%と、平均2回から3回転職をしてトップに至ります。

日本の内部昇進を前提とするキャリア形成は生産性にどのような影響を与えているのか。やはり経営の在り方や働き方にあると思います。内部昇進では会社や上司への依存度が非常に高く、上司の評価に多大に依存しています。また外でキャリアを続ける可能性が低いため、独自の趣向や創造性に欠け、忠誠心の競争や過剰労働、保守的な意思決定に繋がってしまいます。自分を守るためには企業を守らなければならないということです。さらに企業に将来がないから早めに転職するというドイツやアメリカの常識は日本にはあまり当てはまらず、管理職が転職をしないという流れは、新規企業や外資系企業の市場参入の壁になっています。

どのような改善、改革の方法があるのでしょうか。本当に必要なのは管理職の外部労働市場を育てることだと考えています。法律や規制の問題ではなく、構造の問題です。経済全体に関わる様々な調整や改革、中途採用と内部昇進の両方に対して平等なキャリアチャンスを与えるという人事制度の改革が必要です。しかしそのような決断は1つの企業だけではできません。内部昇進の入口である新卒の一括採用を見直し、キャリアは会社のものではなく従業員のものにしていくことが大切だと考えます。

ご清聴ありがとうございました。



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