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国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2019年8月

卓話『農と食における社会貢献』令和元年8月5日

JA全農 チーフオフィサー 戸井 和久様

JA全農 チーフオフィサー 戸井 和久様

全農は農畜産物の販売や生産資材の供給などの事業をおこなっています。これを会員であるJAや県連合会と共同して、スケールメリットを生かして競争力のある経済事業活動を展開し、組合員の農業所得の増大と農業生産力の拡大を支援していくことが全農の役割です。それとともに国民への食料供給を果たしていくことが求められています。

本日は、『世の中の変化』、『日本の食品業界が抱える課題』、『農と食における取組み』という3つの形でご説明します。

まず、どういう変化が起きているのかを説明します。現在eコマースが18兆円の規模になり、逆にリアル店舗が苦戦をしています。それに伴い宅配サービスの規模がどんどん上がっています。物流の事情というのは今後楽になるということはありません。今までは物を運ぶという一つのポイントで物流を考えていたかもしれませんが、すでに戦略的に物を動かすという風にロジスティックス的な考え方を持たないと、この物流事情は解決できません。

少数世帯が増加し、外食や、お惣菜を中心とした中食へマーケットが変わってきました。外食の規模が25兆円、中食の規模が10兆円という世界です。共働き世帯が1980年から約2倍になり、時短して自分たちの時間を作っていきたいという主婦の方も増えていますので、冷蔵商品、冷凍商品が大きく伸びています。

人生100年時代と言われていますが高齢者向けのマーケットというは、やはり考えていかないといけないと思います。健康という一つの切り口で言いますと、以前はカロリーのことが言われていましたが、今はロカボや減塩、タンパク質、プロテインを取りましょう、という風に考え方は変わってきました。

このように変化が激しい中で、新しい経営というのは今まで常識だったことが一瞬のうちに非常識になっていくということを認識し、適応していかないといけないと思っております。

日本の食品業界における課題についてご説明します。農業就業者数が減少しているだけではなくて、高齢化が著しく進んでいて、平均年齢が67歳です。産業としての持続が非常に危ぶまれる状況です。毎年新規就労者がはいっておりますが、それでも追いつかないというのが現状です。

自給率はカロリーベースで39%、生産額ベースで66%です。やはりまだまだ日本の野菜果物が安定的に供給できないという裏返しでもあります。

そして、日本は世界でも有数の食品ロス大国です。食品ロスが流通過程段階で646万トン出ています。これについては2030年までに世界全体の食品廃棄を半減しましょう、ということで各量販店、全農も動き出しております。

食と農における取組の例ですが、今13拠点で200ヘクタールの農業生産法人を作っております。工程管理もすべて行い、安全で安心な農作物を農家の方に作ってもらうお手伝いをしようということと、リサイクル率を上げる、例えば売り場で出た野菜のごみをたい肥化して畑に入れ、そこで作った生産物を今度はお店に入れるという、リサイクルのループを行っております。

フードロスを減らす取り組みで、フードシェアリングがあります。規格外や残った商品を流通してもらうという試みを全農が支援してやっております。それと、こども食堂やフードバンクも、どんどんやっていきたいと思っております。

農業の現場で非常に重要となる労働力支援も、異業種と取組んでいます。農業の生産時に、その会社は労働力が余ってしまう、そのようなところと連携をして労働力支援スキームというのを作っています。それと農業と福祉の農福連携も全農が中心になってどんどん進めております。農業の世界は障害者の方でもできる部分がたくさんあるのです。これを生きがいと感じていただいて、農業をどんどん頑張ってもらうという流れを作っております。

現在、地域活性化事業の総合プラットフォームというものを、全農が核になって作ろうとしております。労働力支援、誘客販売支援、直売所もそうなのですが、地域の産品を素材だけではなくて、加工度合いを上げて付加価値を高めたものを、販路を我々が確保して提供することができないかと思っています。あとは農泊支援、これからは農業の現場の空き家をきちんとJAが管理し旅行企画をして、国内外の人を呼び寄せたいと考えております。情報発信によって地域農業の課題にアプローチして、元気な地域社会作りを支援していくということが重要かと思います。

日本の農業発展のためには、消費者になるということを含めて、地域が活性化していかないと都市の活性化はないと思っています。もっと都会の方も農業のことを知ってもらい、農業の現場にも入っていただきたいと思っています。地域の人たちが逆に都市に自分たちの商品というか「形」を作っていけばもっと情報共有ができます。ただ単に商売ではなく、お互いに日本の農業を発展させるために一緒に何かできることがないかと思っております。

今後とも全農は色んな方々と連携をして、アライアンスをしながら日本の農業を守り、都市の方にも参加意識をもってもらいたいと思っております。ありがとうございました。



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