「楽しく一緒に気分よく」

国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2019年1月

卓話『イギリス大学院留学を終えて』平成31年1月21日

2017-2018年度グローバル補助金奨学生 中谷菜美様

2017-2018年度に、東京六本木ロータリークラブにスポンサークラブとなっていただき、グローバル補助金奨学生として派遣いただいた中谷菜美です。イギリスのキングス・カレッジ・ロンドン、International Child Studies修士課程で勉強させていただき、昨年9月に日本に帰国いたしました。派遣にあたり温かい応援をいただき、本当にありがとうございました。大学院終了後は、アフリカのウガンダという国で4ヶ月ほどインターンをし、今年1月に帰国しました。今日は、大学院留学のご報告に加えて、インターンの経験、そして今後のキャリアについてもお話しさせていただきます。

私は、国際機関にて、脆弱な立場に置かれた子どもたちへの支援活動に携わりたいとの想いで、子どもの保護という分野を中心に勉強してきました。子どもの保護とは、一言で表現すると、子どもを全ての形態の暴力や搾取から保護することを目的とした活動です。具体的には、虐待の現状や子どもに及ぼす影響、予防・対応方法、家族と一緒に暮らせない子どもへの代替ケアのあり方といった日本にも共通する内容、そして途上国でより課題となっている児童婚、FGM(女性器切除)、少年兵、児童労働といったテーマについても学びました。ロータリーの重点分野である『平和と紛争予防/紛争解決』に関しても、親と離れ離れになった難民の子どもの保護の問題や、紛争などの緊急時の子どもの保護について学んだほか、難民問題に関する様々なセミナーに参加して知見を広めることができました。

在学中には、勉強だけでなく、セーブ・ザ・チルドレンUK(イギリス)のボランティア活動にも参加し、ロヒンギャ難民の子どもたちの人権を守り支援を充実させることを訴えるキャンペーン活動を行いました。子どもを取り巻く課題に対して理解を深められただけでなく、例えば政治家に直接話をしに行ったり、署名を国会に提出したり、国民に対するイベントを開催したりと、様々なキャンペーン手法を学んだり実践したりする中で、啓発活動をどう戦略的に行い影響を及ぼしていけるのかという意味でも、とても勉強になりました。

修士論文では、発展途上国における子育て支援を通じた虐待予防について研究しました。このテーマを選んだ理由は、紛争や災害などの困難な状況に置かれた状況で子どもの健全な発達が保証されるには、子どもをケアする親への支援も重要となるからです。ストレスが高まる環境の中で子育てのサポートをすることで、子どもが虐待や体罰などを受けるのを防ぐことができます。また途上国を中心とする多くの国では、体罰や心理的虐待ともみなされる子育て(怒鳴ったり、子どもの感情の否定)が習慣的に行われている状況もあり、国際的にもこれらを含む子どもへの暴力を根絶することが目標の一つとされています。このような背景から、子育てを通じた虐待の予防は、今後自身が子どもの保護官として働く上で、専門性の軸となるのではないかと考えました。研究では、様々な文化的背景を持つ人々の間で、暴力を伴わない子育てを普及していくためのポイントなどが明らかになったため、この知識を今後の活動に活かしていきたいと思います。

現地では、エッジウェア・スタンモア(Edgware and Stanmore)ロータリークラブのみなさんがホストクラブとなってくださり、たくさんのご支援をいただきました。多くの行事にもご招待いただき、シェークスピアの故郷、ストラッドフォード・アポン・エイヴォンという街で開催されたロンドンの地区大会にも参加させていただきました。地区大会では、奨学生から挨拶をさせていただく機会をいただき、ホストクラブの方々だけでなく多くのロータリアンの方々と交流させていただきました。また、ロータリアンの方が中心に運営されているフード・サイクルという団体のボランティア活動にも参加させていただきました。スーパーマーケットから寄付してもらった食材を3品のコース料理にし、ホームレスの方や難民、孤独を感じている人などに無料で提供する取り組みですが、食料廃棄と孤独という2つの地域の課題に対応しているとのことで、イギリスの抱える課題を垣間見ることができました。そのほかにも、ホストクラブの毎年恒例の寄付金募集のクイズ大会や、ロンドンのロータリークラブ全体で主催している若い世代の音楽を支援するユース・ミュージック・コンサートなど、様々な活動に参加させていただきました。ロータリアンのお一人お一人が、地域でのボランティア活動に積極的に参加していらっしゃる姿を見て、ロータリーの地域貢献への姿勢を改めて実感することができました。ロータリー活動に誘ってくださるだけでなく、ロンドンでの生活、勉強、キャリア構築全てにおいて多くのサポートをいただいたカウンセラーのフランさんには心から感謝していますし、ロンドンの母のように思っています。素晴らしい出会いを与えていただき、ロータリーの奨学生として派遣いただいたことをとても幸せに感じています。

大学院留学の後、2018年9月から、2019年1月まで、ユニセフのウガンダ事務所にてインターンをしてきました。将来ユニセフ職員として働くため、ユニセフの仕事の進め方を理解するとともに現場経験を身につけたいという動機で留学中に応募し、専門分野である子どもの保護の部署に配属されました。ウガンダの子どもの保護の部署では、児童養護制度の強化、少年司法制度の改善、児童婚(18才未満の子どもの結婚)や早期妊娠の削減、出生登録率の向上などの分野に、ウガンダ政府とともに取り組んでいます。私はその中で、子どもの保護事業の広報記事の作成や、子どもの意見を事業に取り入れていくための戦略作り、事業管理のための指標の作成、難民に対する子どもの保護事業(チャイルド・フレンドリー・スペースという子どもが安心して遊べる場所にて心理社会的支援を提供したり、親と離れ離れになった子どもに代替的ケアを提供したりする活動)の補助業務などを担当していました。

地方出張を通じて現場を見る機会も与えていただいたのですが、その中でも印象的だったのは、児童婚のサバイバーの女の子を取材するために、ウガンダ北部の農村地域に出張に行ったことです。ウガンダでは、現在20-49才の女性のうち、49%が18才より前に結婚しており児童婚が非常に多い状況です。児童婚は若年層の妊娠による母子の健康リスク、年の離れた配偶者との生活の中での暴力のリスク、学校教育が継続できなくなることなど、女の子にとって多くのリスクをはらんでいるため、ユニセフはその削減に取り組んでいます。取材した、ある14才の女の子は、帰り道に突然21才の男に誘拐され、そのまま一晩を一緒に過ごすことを強要され、強制的に結婚させられたと話してくれました。このような行為は、ウガンダの法律では犯罪となるのですが、特に農村では、結婚前の男女が一晩を過ごせば結婚に相当すると考える習慣があり、また法制度への認識も高くないので、被害者が結婚を余儀なくされる事例が後を絶たないそうです。この女の子は、ソーシャルワーカーの助けもあり、結婚を破棄して家族の元に帰ってくることができましたが、それでも家族が結婚を破棄する代償として牛と現金を支払わなければならなかったそうです。また、別の家族は、自分の子どもは児童婚をさせたくないと考えているものの、農作物を売って得られるわずかな収入で、5人の子どもたちに教育を提供できる保証はなく、教育費を賄えなくなった時に児童婚が手段となってしまう可能性が否定できない状況でした。この出張を通して、児童婚という問題に対処していくには、貧困や文化や習慣など様々な要因を考慮しなければならないということを実感しました。インターンを通じて、ユニセフの事業立案や評価の方法、また子どもの保護事業の現状と今後目指すべき方向性についても理解が深まりました。さらに、同僚と様々な話をする中で、今後の自分のなりたい姿もより明確になりました。この経験を次の職場でも活かしていきたいと考えています。

今後は、今年2月中旬より、ユニセフ・マラウィ事務所にて、子ども保護事業に従事する予定です。留学前に掲げた「ユニセフの子どもの保護官となる」という目標のスタート地点に立てたことを非常に嬉しく思っています。ロータリーの皆様のご支援がなければ、このように目標を達成することはできなかったので、心から感謝しています。今後は、イギリス大学院での学び、そしてウガンダでのインターンの経験を土台に子どもの保護分野でさらに経験を積み、脆弱な立場に立つ子どもたちが生まれ持った可能性を最大限発揮できる社会づくりの一助となれるよう努めていきたいと考えています。今後とも、ロータリーの皆様に良いご報告ができるよう努力していきたいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

ウガンダの様子1
カウンセラーのフランさん(中央)ご夫妻と。
ウガンダの様子2
地区大会で、エッジウェア・スタンモア(Edgware and Stanmore)
ロータリークラブのみなさんと夕食をご一緒しました。
ウガンダの様子3
ユニセフ・ウガンダ事務所の子どもの保護部署の同僚と。
ウガンダの様子4
ウガンダ北部への出張。日干しれんがでできた壁に藁葺き屋根の家が、
典型的なウガンダの農村地域の暮らしです。

卓話『夢の実現に向けて』平成31年1月28日

アートコーポレーション(株) 代表取締役社長 寺田 千代乃様

アートコーポレーション(株) 代表取締役社長 寺田 千代乃様

アートコーポレーションの寺田でございます。

当社は昭和43年に寺田運輸として主人が創業いたしました。そして昭和51年、運送業の片手間だった引っ越しを、サービスを軸にして進めていきたいという思いから、私が代表者としてアート引越センターを創業いたしました。お客様の「あったらいいな」の積み重ねが現在も続いております。

昨年、登場人物のアルバイト先をアート引越センターにしたいと、ドラマの協力依頼がまいりました。いつかは引っ越しといえばアートと言われるぐらいの会社になりたいという創業時の夢が、実を結び始めていると感じました。マニュアルが無いところから常に主人と色々なことを話し合いながら会社を成長させてきた中で、何より、従業員が誇りを持って仕事をしてくれている結果だと思っております。

アートは0123というブランドの下で、アートバンラインという一般物流、アートプランニングという不動産関係、そしてアートチャイルドケアという保育事業を併せてグループ経営をしております。アートコーポレーションとしてサービス業で1000億の売上にもっていきたいという長年の目標が、寺田運輸の創業からちょうど50年目の記念の年に叶いました。順風満帆に成長してきたかと思われるかもしれませんが、0から起こした会社ですから、いくつもの壁やハードルがあったように思います。しかしそれを越すごとに、会社も成長し、強くなり、経営者も強くなってきたのだと思います。

引越センターをはじめて43年が経ちますが、バブル崩壊やリーマンショック、そしてその間の売上の苦戦など、その都度経営者としての決断をしてきました。2004年に上場し、翌年2005年には東証一部上場をいたしました。上場に挑戦するということは、会社を会社らしく変える大きなきっかけになったと思います。しかし、4,5年経ったあたりから、私が外部にむけてコミットした数字の達成や、足元のことをやり遂げようという保守的な会社になっていきました。大きな目標を掲げて挑戦できる会社であったにも関わらず、無難なところで数字を出すようになりました。これは会社にとって良くないと考え、2011年に非上場化をいたしました。人口減少社会において引越しのマーケットは縮小し、3年後にはかなり経営が厳しくなるであろうという厳しいレポートも出ましたが、非上場化したことで従業員が活き活きとしてきました。非上場化したからといって社会的に守らなければならないことは一緒であり、皆が同じようにやっていこうと目標を掲げ、凸凹はありますが、この7年間は増収・増益という形で経営を続けることができております。非上場化した年から顧客満足度ランキング3年連続1位を獲得し、一度ランキングを落としましたが、その後も今年で4年連続1位をいただいています。それぞれの部署で、皆が自分達のベストを尽くし、お客様からの支持がいただけるところまでくることができたと思っております。

私の個人的な夢は、ワーキングマザーのサポートをすることでした。私自身が子育てをしながら会社の経営をしてきた中で、当時は子どもを預けられる場所がなかなかありませんでした。14年前にボランティアで大阪市内に2ヶ所の小さな保育園を作りましたが、ボランティアではたくさんのお母さん達を助けられないことに気付き、まずは保育事業のビジネスモデルとして、3年間で100ヶ所の保育園を作ることを目標としました。認可保育園が主流ですから、株式会社が運営する保育園は質を問われます。株式会社だからこそできる運営をしようということで、「生きる力」を保育理念とし、現在14年目、全国180ヶ所の保育園を運営しております。そしてお預かりした人数は6000人を超えました。

また新たな取り組みとして、子ども達の睡眠時間をデータ化し、3年で7000名のお子様のデータを作りました。赤ちゃん学会や日本眠育推進協議会、そして発達障害の先生方と一緒に研究をし、睡眠時間と発達障害や登校拒否などの因果関係が数字でわかるようになってきました。発達障害の乳幼児のための教室の取り組みもスタートし、今は全国で12ヶ所ですが、2020年までに50ヶ所にしたいという目標もあります。色々なことを勉強しながら、子ども達が成長した時に、お母さん達に良かったと言っていただけるような活動を続けていきたいと思っております。

創業時より、「夢を持とう」「目標を持とう」「強い会社、楽しい会社にしよう」と言い続けてきました。夢は持たなければ実現しません。皆が夢を持って常にステップを上げ、いい結果が出たら皆で分かち合う。この積み重ねが大切だと考えております。

売上はお客様の支持のあらわれ、利益は従業員の知恵のあかし。まだまだ発展途上ではございますが、次の夢に向かって一歩一歩進んでまいります。

ありがとうございました。



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