「楽しく一緒に気分よく」

国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2017年2月

卓話『ロータリー米山奨学生を通じて・・・』平成29年2月27日

許 俊彦様

地区米山学友幹事 許 俊彦様

私は大学院進学のため9年前に来日しました。祖母からは、昔、日本人の家で家政婦をしていて、奥様がくれた日本のお菓子がおいしかったというような話を聞いていました。そして高校生のとき、今度は歴史の授業で日本に出会います。もちろん戦争がテーマですが、私にはアジアの小さな島国がなぜこんなに早くから世界の列強になり、戦後、再び豊かになれたのかという疑問が強く湧きました。テキストは日本が明治維新で近代化に成功したからだと教えていますが、同じ時期に同じような改革を試みた中国や韓国が失敗したのに日本が成功したのは、むしろ社会構造や国民性の違いではないかと考えました。それで日本のことを勉強したくなり、日本文学を専攻に選んで上海の大学に行き、日本学生支援機構の奨学金を得て交換留学プログラムで日本に来ることができたのです。
初めての日本の生活で印象に残ったのは選挙ポスターです。授業で海外の政治の仕組みとして知ってはいましたが、それを自分の目で見たときは非常に新鮮でした。同時に中国でポスターを張って選挙しようとしたら、どれほど努力しないといけないかと複雑な気持ちでした。2点目は譲り合いの精神で、それを実感したのが東日本大震災です。何日間も孤立していた人々に支援物資が届いたとき、みんなちゃんと並んで必要な分だけ持っていく。当時そのシーンは中国で話題になりました。自分のことだけでなく相手のことも考えてルールを守る。それが社会レベルでできている日本に強い尊敬の気持ちを覚えました。そして私は日本が更に好きになり、上海に帰って卒業した後、再び日本に来ることに決めました。そして2年生の時に米山奨学生に選ばれたわけです。
ロータリーではロータリー精神を勉強するという大事な経験をさせてもらっています。それまで私は成功して金持ちになるという目標は持っていましたが、どのような人生を送りたいかという夢はありませんでした。しかしロータリーの活動を通じてたくさん勉強できたと思います。ここも2点に絞ってお話しします。

1点目は職業倫理です。それまで私は倫理に関して何も考えていませんでした。これは私個人の問題というより、多分、中国社会に普遍的な問題だと思います。商標を盗んででも体や環境に悪いものでも、とにかく作ってみるという考え。しかし20代前半のうちに職業倫理を考える時期を与えてくれたことには非常に感謝しています。2点目は奉仕の概念です。それまでの私は奉仕というのは施しに近いイメージでしたが、ロータリーでの交流を通じて、奉仕できたことを自分が感謝するという気持ちであることを学びました。

現在、中国ではロータリークラブは認められていませんが、私が学んだ譲り合い、職業倫理、職業奉仕の精神こそ今の中国に必要だと思います。これらが中国社会に広まれば、多分中国は周りからもっと信頼され愛される国になる。私は米山学友会の一員として、このロータリー精神を広めたいと思います。

ありがとうございました。

卓話『我が国周辺の安全保障環境と統合運用』平成29年2月13日

河野 克俊様

防衛省統合幕僚長 河野 克俊様

昨日、北朝鮮がミサイルを発射しました。去年は20数発発射していて、技術は着実に上がっています。また去年、核実験を2回やりました。年に2回というのは初めてです。金正恩体制、国内は非常に混乱していると思いますが、その中でああいうミサイルを撃つと間違って我々のところに落ちてくることになりかねませんので警戒しています。

北朝鮮のミサイルに対する我々の対応は、まずイージス艦があって、それが撃ちもらしたらパトリオットⅢというミサイルで撃ち落とす2段構えでやっています。北朝鮮の技術レベルが上がってきたことから、これに新たなBMD(ミサイル防衛システム)について研究をしています。

次、中国ですが、中国はここ20年ほど大軍拡をやっています。中国人民解放軍は昔は陸軍が主体で、海、空はちっぽけな存在だったのですが、今やそれが逆転しつつあります。最近では空母の遼寧が初めて沖縄と宮古島の間を抜けて南シナ海にまで行きました。また尖閣では日常茶飯事で、我々と対峙しています。飛行機もそうです。我々は航空自衛隊の戦闘機でスクランブルを掛けていますが、今は中国に対する緊急発進が最大になっています。

空母の遼寧は元々ロシアが作った軍艦で、ソ連崩壊でスクラップのようになっていたのを中国が買い取って改造したものです。ただ空母の戦力化は非常に難しいのです。横須賀を母港にしているアメリカの空母ロナルドレーガンは乗組員約5千名で、航空基地が洋上で動いているようなものなんですね。現に世界で本当の意味で空母を運用できているのはアメリカだけです。中国が本当に空母を戦力化できるのか私は疑問ですが、過小評価してはいけませんので注視はしています。

あとロシアは非常に活動が活発化しています。北方四島等の軍事化は進めているし爆撃機の日本一周もやりますので、警戒を怠ってはならないのですが、今、プーチン大統領と安倍総理の仲もよいので、我々としては距離を保ちつつ見ています。

内閣府の調査によると自衛隊に好感を持つ人はほぼ100%です。私が防衛大に入るころの状態からは考えられない時代です。東日本大震災では自衛隊が本当によくやってくれたと評価をいただいています。ただそれは遡れば1991年の湾岸戦争の後に掃海部隊をペルシャ湾に派遣して掃海活動をしたり、カンボジアのPKOとか阪神大震災とかイラク派遣だとか、我々が誠実に任務を遂行してきたことの積み重ねの結果だと思います。したがって隊員には、与えられた任務を粛々と遂行することが国民の理解を得る唯一の道であると指導しています。

ありがとうございました。

卓話『激動の世界と日本経済』平成29年2月6日

島田 晴雄様

慶應義塾大学 名誉教授 島田 晴雄様

皆さんこんにちは。アメリカ大統領選ではみんなびっくりでしたね。ただ選挙戦を見るとトランプさんの応援者って真面目に自動車作っているような人。その彼らは、今、アメリカでWhite Trashって言われている。なぜそうなったのかというと技術革新ですね。アメリカで肩で風切っている人、50年前は自動車、鉄鋼産業でしたけど、今は法律かITか金融。そういう中にトランプが現れて強烈にヤジると、その人たちが中国なんかぶったたけっていうことになる。酒場でしか言えないようなことを、あの人は大統領候補なのに平気で言う。そうすると彼らは、この人を逃したら我々はTrashから抜け出せない、トランプはワシントンをぶっ潰してくれると思って本気で支えたということが分かりました。

しかし彼は問題だと思います。言い方に品がなくて不愉快。そしてワシントンのこと何にも知らない。彼は大統領になって1週間の間に18も出鱈目な大統領令を出しているけど、大統領だから一応法的効力があるんですね。大企業もメキシコへ工場作ると言ったらやられちゃう。ただアメリカの立派なところは4割以上の人が反トランプ。法律家の方も体を張ってね。トランプが相手ですから殺されるかもしれないという危機感を超えてやっていると思いますよ。アメリカの復元力に期待しています。

そういう中で日本は今後どの道を行くべきか。一つは安倍さんがそこそこ頑張っているしマティス国防長官やティラーソンさんも、そこそこまとも。だから周囲の何人かで押さえて、トランプ政権に穏当な方向へいってもらう。それで日米関係促進して、中国、ロシアとも仲良くやる。これがプランA。これを期待したい。ところがプランBはちょっと怖くて、そうならなかったらどうするんだということです。

トランプさんはこう言っています。1兆ドルのインフラ投資。35%の税率を15に。輸出には補助金、輸入には課徴金。国境税。これはどういうことかというと、まず膨大な財政出動。アメリカは既に莫大な財政赤字を抱えています。経済が4%成長なら循環するけど多分できません。するとこれみんな赤字になってWhite Trashが税金で払わされるんですよ。財政面で日本より悪くなるかもしれない。日本は円安にして怪しからんと言うけど、日本は財政赤字を乗り越えようとしているだけ。彼はドル安になればいいと言っているけど減税も投資も全部ドル高要因。これが日本にどう影響するかというと最大の問題は沖縄。もしかしたら日米安保なんて関係ないと言い出しかねないですね。

この前アラブに行って我々の習っている世界史って何なんだろうと思いました。ギリシャ、ローマからイギリス、そしてPax Americanaでアメリカ礼賛っていう世界史。中国もアフリカも中東もない。これでは世界の1/4しかないですよ。私もこれはいけないと思いました。トランプさんが我々の目を世界に向けさせてくれた点は評価しなくちゃいけないと思います。

ありがとうございました。



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