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国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2023年12月

卓話『SDGs×音楽~大地の詩チャリティーコンサートを通して~』令和5年12月4日

ピアニスト アール・ミューズ合同会社代表社員 西本 梨江様

ピアニスト アール・ミューズ合同会社代表社員 西本 梨江様

大地の詩チャリティーコンサートは、SDGsの2番「飢餓をゼロに」の達成の力になることを目標に掲げ、国際連合食糧農業機関FAOにチャリティーをするために、「すべての人に食料を」という大きなテーマのもと、毎年著名なゲストの方をお招きして音楽のコラボレーション、またはメッセージをいただく形で、その年のテーマに沿ってこれまで20回開催してきました。今世界では、十分な食糧が生産されていながら8億人以上の人々が飢餓に苦しんでいるという現実、また世界の人口の半分に迫る人々が健康的な食事をとることができていない状況があります。本日はSDGs×音楽、私の取り組みについてお話させていただきたいと思います。

わたしは自分のピアノコンサートとは別に、絵本の映像をスクリーンに映して朗読の方に絵本を読んでいただき、その絵本に対して感じたものをオリジナルで演奏するというスタイルの絵本コンサートをずっと開催してきたのですが、そのきっかけになった絵本が、難民を助ける会の前会長であった柳瀬房子さんが書かれた「地雷ではなく花をください」という絵本です。子ども達が安心して暮らせる地球を残したい、やむにやまれない気持ちでこの絵本を書きましたという柳瀬さんのメッセージ、そして絵本に込められた平和へのメッセージを、ピアノを通して伝えることができないかなと考えた時に、絵本コンサートの企画が生まれました。

中学校を回らせていただいたり、地域のコンサートなどで柳瀬さんのメッセージを伝える活動をしていたところ、2000年にチェホフ国立劇場で行われた日露友好サハリンピアノ贈呈コンサートに出演させていただくことが決まりました。サハリンの芸術学校にヤマハのピアノと楽譜がプレゼントされ、またピアノを使って芸術学校の先生と日本のアーティストのコンサートが企画されました。ピアノや楽譜は小澤征爾さんとロストロポーヴィチさんの日露友好友情コンサートの収益金で、またチェホフ国立劇場での日露友好サハリンピアノ贈呈コンサートは難民を助ける会と国際交友基金で主催がされています。

コンサート当日の朝、トロイツコエ村というところの孤児院を訪問しました。子ども達が手作りの楽器で歓迎演奏会を開いてくれたのですが、使われているのはとても楽器と呼べるようなものではないのに、目をきらきら輝かせてすごく楽しそうに演奏してくれている姿を見て胸を打たれました。当時大学生だったわたしは、家にピアノがあって、自分の好きな時に練習ができるという環境にいながら、上手くいかないことがあると不満に思って毎日を送っていました。しかし自分の好きなことができる毎日は当たり前ではなく、日々感謝をして自分ができることを精一杯やっていかなくてはいけないということを子ども達から教えてもらったような気がしました。そこから自分の音楽、ピアノの演奏が社会と繋がり、社会の役に立てるようなピアニストになりたいと思うようになりました。帰国後にFAOの副所長さんをご紹介いただいたことが、大地の詩チャリティーコンサート開催のきっかけでした。

昨年の大地の詩チャリティーコンサート2022は、「未来の子ども達へ」というテーマで、ゲストに紺野美沙子さんをお迎えし、子ども達が夢を描いて幸せに生きていけるような世界でありますようにという思いを込めて開催しました。わたしは7歳になる息子の子育て中です。夢ややりたいことを見つけるにはやはり食が大切で、栄養のあるものを食べて身体が健康であるということが大切だと日々感じています。夢を実現するためのスタートラインにすら立てずに、考えることもできない子ども達がたくさんいる現状を解決していかなくてはいけないと感じています。そして命を繋ぐ食と同じく、心の健康も大切だと思っています。今世界では不安なことがたくさんあり、戦争によってたくさんの子ども達の命が失われて、また命があっても心が完全に壊れてしまってどうしようもない子ども達がたくさんいます。音楽には直接心に届く力があるのではないかと思っており、わたし自身の音楽を届けることで元気になってもらえるような演奏ができればなと日々思いながら練習をしています。

SDGsの17の開発目標の中には芸術文化に関するものは含まれていませんので、なんとなくSDGsと音楽が結びつきにくいと感じることがあると思います。横浜市立東高校でのSDGs Premium ProgramというSDGsの取り組みの授業に数年行かせていただいていますが、やはりそこでも最初は8割の生徒が、SDGsと音楽がどう繋がるのか分からなかったと言っていました。しかし音楽にできることがある、音楽にしかできないこともあるという感想をもらって、わたし自身とても力を貰いました。「すべての人に芸術に触れることのできる環境を」これは高校生が考えた開発目標です。SDGsの17の目標は、人が幸せに生きていくための道しるべが示されているのだと思います。人の幸せは何かということはすごく大きすぎて、また人それぞれ幸せの感じ方は違うと思うのですが、人との関係や交流、自分の居場所がある、生きがいがある、やりたいことがある、そのようなことが生きるエネルギーに繋がり、幸せに繋がるのではないかと思っています。心も含めて幸せに健康に生きていくことがとても大切で、あたたかい人間関係の中でより良くしていくことが17番目「パートナーシップで目標を達成しよう」に繋がり、とても意味のあることではないかなと思っています。

わたしが作曲した「SDGs だれ一人とり残されない世界のために」は、一人ひとりの思いやりの心や行動が力となってイノベーションを起こしていくような、新しい世界が生まれていくようなイメージを持って、誰もが力強く自分の人生を歩んでいけますようにという願いを込めて作曲しました。

この時間、この空間、ご一緒させていただいている皆様としか生まれない音楽があります。自分が伝えたいことを感じていただき、心をかえしていただいていることがわたしの力になっています。わたしの音楽を聴いて心を動かしていただけることが、原動力や生きがいになっています。それはやはりわたしが取り組むSDGsに繋がるのではないかと思い、これからも日々練習を重ね、本番で心の演奏をお届けしたいと思っています。

大地の詩チャリティーコンサートは昨年でファイナルだったのですが、またこれからもチャリティー活動を続けていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

本日はありがとうございました。



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