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国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2019年9月

卓話『脳治療分野のインテルになる ―大学発ベンチャーの挑戦―』令和元年9月2日

(株)ブレイゾン・セラピューティクス 代表取締役 戸須 眞理子様

(株)ブレイゾン・セラピューティクス 代表取締役 戸須 眞理子様

本日は私どもの会社の話と、日本のベンチャーを抱える社会問題や経済環境などの課題についてお話をさせていただきます。世界で戦えるベンチャーを作ろうとする動きはありますが、そのレベルまで達成していないのが現状です。皆様に共有させていただき、そして来年に向けての資金調達というところでも是非ご支持をいただければと思います。

私どもの会社は大学発のベンチャーで、二人の研究者の成果を社会実装化しようとしています。会社としては3年前に設立した若い会社で、経産省で始まった約150社を世界のユニコーン企業にするためのJ-Startup支援企業というプログラムに選ばれました。チームは、研究開発部、臨床開発部、事業開発部から成り立っています。

脳には、必要なものは通し不要なものは通さない、血液脳関門という鉄壁な生体バリアがあります。脳疾患の治療の困難さは昔からの大きな課題で、癌においても脳腫瘍はかなり予後が悪く、化学療法がなかなか効かないという現実があります。特に小児は発達中の脳なので放射線治療ができず、外科的手術後には化学療法しかなく、予後が大変悪いというのが現実です。そして高齢化社会に伴い、神経変性疾患、認知症、パーキンソン、ALSなどが増加する一方で、薬がなかなか出てきません。さらに脳分野は希少疾患が多く、皆さまが取り組まれているポリオも、脳にいくとなかなか難しい部分があります。

薬を脳に届けられないという状況を解決しようとしているのが、この二人のサイエンティストです。東京大学工学部の片岡一則先生は、薬を届けるためのナノパーティクルを開発しました。そして東京医科歯科大学神経内科の横田隆徳先生です。癌を検出するためのPET検査で使用するグルコースを脳が取り込むというメカニズムを使って薬を運べないかを考えました。

二人の先生方はもっと大きなことを考えていて、脳だけではなく、病巣を検出して診断し、治療をするという「体内病院」という大きなコンセプトで開発を進めています。その中で私どもは、脳に薬を届けるというところを担当しています。医師が乗った小さな潜水艇をミクロナイズし、血管から注射して脳疾患を治療するというSF映画が公開されてから50年が経ちました。この潜水艇を作ろうとしているのが私どもです。ナビゲート機能を持ったウイルスサイズのミセルをたくさん作って、それを医薬品と組み合わせることによって潜水艇を作るのが私どもの技術です。医薬品をミセルという形にして空腹時に血管内に打ち、食事をしてブドウ糖の供給をすると、薬をもった潜水艇が脳の血管へやってきます。そして脳にブドウ糖がやってくると、トランスサイトーシスが起こり、血液側から脳の神経細胞の中へとミセルが移行していきます。そして細胞に入ったらミセルが崩壊して中の薬剤が出てくるという仕組みです。ここまでナノテクノロジーは進んできています。私どもは、脳への薬物送達の最新技術を作って、その技術サイクルによって脳に有効な物質を届けるという最新の技術を提供する会社になりたいと考えており、さらに小児脳腫瘍やアルツハイマー、パーキンソン、ハンチントンといったような薬を、国内外の色々な製薬会社と共同研究をして、世界中の製薬メーカーから市場に出される脳神経疾患の薬のパッケージに「ブレイゾン イン サイド」とシールが貼ってある世界を夢見ているところです。

次に、経営資源である人・モノ・金の観点から、日本のベンチャーの現実を考えていきます。

経営人材は不足しています。国をあげてのリクルートは始まっていますが、ベンチャーはグローバルに活躍できる経営者を必要としています。専門家を招きたいとも考えていますが、製薬会社の現在のお給料は出せないのが現状です。そしてベンチャーというのは、社会問題を自分たちが解決するんだという志のあるメンバーを必要としています。

私どもは技術を提供していますので、モノ自体はいいものを持っていると考えています。そこにお金を出資してもらえるためのアピール力が重要です。今創薬ベンチャーは注目されており、アメリカのFDAが認めた新薬は半分以上がベンチャーが最初に作った薬です。ベンチャーが集中して力を注ぐことでより良い素材が出てきて、それを製薬会社が形にします。

日本でアメリカのようなベンチャーが育っていない一番の原因はお金です。2017年のバイオベンチャーの総投資額は、アメリカ100億ドル、中国55億ドルに対して、日本は3億ドルです。ベンチャーに対する資金調達が進んでいると言われますが、日本の規模では世界には勝てません。資金源はベンチャーキャピタルからの出資、製薬会社と共同研究をすることによる出資、そして企業からの投資です。世界にはビル&メリンダ・ゲイツ財団、マイケル・J・フォックス財団など色々ありますが、日本にはまだなく、是非皆様からのご協力をいただきたいと思っています。

日本は世界中の中で、イノベーションをおこす力がこの5年間で20位から13位と上がってきました。本庶先生や山中先生、大隅先生といったノーベル賞受賞者もたくさん出てきて、質も上がってきていると言われています。ですので、日本に足りないリスクマネーという点で皆様からのご支援をいただき、社会問題を解決しようというベンチャーを是非サポートしていただきたいと考えています。

私どもは東京大学の中に本社があり、川崎市のナノ医療イノベーションセンターに研究室を構えています。そしてこの4月からボストンにラボを出しました。共同研究先がボストンにあるということと、日本の投資マネーだけでは足りない部分をアメリカのベンチャーキャピタルからとっていくために、アメリカに出ていかなければならないということです。

こうした環境において、日本の経済環境や社会環境が改善されていくことを、私どもをはじめ、仲間のベンチャー経営者達が願っているところです。

ありがとうございました。



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