つなげよう、つながろう、新しいやりかたで (Connect and Be Connected in Innovative Manners)

国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

文字サイズ変更



卓話

2016年10月

卓話『好い加減のフランス』平成28年10月24日

中村 江里子様

フリーアナウンサー 中村 江里子様

私はパリに住んで15、6年になります。日曜日にはバスケットいっぱいの様々な種類のパンを好きなだけ食べたいというのが子どもの頃からの夢でした。フランス・パリのパンは美味しいよ!!と友人に勧められたのがきっかけで毎年通っているうち、いつの間にか住むことになりました。でも実際住んでみると観光のときと違い、いろいろなショックがありました。そんなことを書いたのが4年前に出版した「Naaande!?」(ナンデ!?)という本です。フランス人の編集者となぜ日本人はこうなんだろう、フランス人は?と議論しながら作りました。

例えば私が初めて友人宅のディナーに招かれたときの話。9時と言われたので私は5分前に着いたのですが、ベルを鳴らすと、「失礼な奴だなあ!!」って私に言うのです。勿論、冗談でですが。そこで初めて、フランスでは9時と言ったら9時15分ぐらい、つまり遅れていくのがマナーだということが分かりました。実際、全員揃ったのが9時45分ぐらい。もうおなかはペコペコです。10時になってようやくテーブルに着くと、食事中でもみんなよく飲む、食べる、そして口も休みなく動かすしで、唖然としているうちに日付が変わってしまいました。やっと1時過ぎてお開きの雰囲気。ところが・・これで帰れる!!と思ったのに、それぞれがサヨナラのキスをしている間にまた話が盛り上がって・・そのまま30分立ち話。これが私の初めてのディナーの経験です。この国は一体どうなっているの?本当にタフだけど時間にいい加減だし人の話を聞かない。それはそれはショックでした。日々の生活でもカフェではカップをテーブルに乱暴に置かれてカフェがこぼれる、タクシーの運転手に行く先を告げてもろくな返事もくれない。もしかしたら私はこの国に受け入れられていないのかと不安にもなりました。実際、パリでは“パリ症候群”という病名があり、パリに来た日本の方が、やはり私のような体験で精神的ダメージを受け、帰国したり入院したりしています。それほどに日本人はダメージを受けやすい。こんなにもフランスが、パリが好きな日本人がなぜ心を病んでしまうようなことがあるのか?フランスと日本の精神や習慣の大きな違いをフランスの方々にも知っていただきたくて、この本を書くことになったのです。

日本人は真面目できちんとしていて、時間も守る。でもフランスでは仮に電車にしても遅れたり急に止まったり、そんなことは日常茶飯事。待っていれば電車はくるよ!!って誰も気にしない。そのいい加減さに初めはイライラしましたが、今はそれくらいの余裕を持つ方が毎日の生活がハッピーで気持ちも穏やかでいられるような気がしています。

この15、6年でパリはとても変わりました。当初、日曜日は見事にお店は休みで、平日もスーパーは7時に閉まってしまう。それがここ数年、日曜日も開店しているお店が増え、日本でいうコンビニのようなお店もできて夜中まで開いています。驚くほどの変化。初めはイライラしたフランスの“いい加減さ”も今では“良い加減”だと思えます。だから・・・便利になるのは助かりますが、どこかでフランスらしい“いい加減さ”は残しておいてほしいですし、つまりはその“いい加減さ”が心の余裕だったりするのではないのかしら?とも思うのです。

きっちりするのは良いことですが、それをほかの人にも求めるためにお互いがきりきりしてしまうのは残念です。

最近パリで日本のいじめの話題を聞くと・・悲しいです。どの国にもある問題ですが。“良い加減”に“いい加減”であることで人との距離感や自分の心を気持ちよく保つことができるのではないかしら?と思うのです。

ありがとうございました。

卓話『オリンピックレガシー』平成28年10月17日

涌井 史郎様

森ビル 株式会社 顧問 涌井 史郎様

1964年は講和条約締結後、日本が新幹線や首都高速などの技術を持って世界の戦列に復帰した年です。戦後を終えた日本を見てくれというメッセージでした。では2020年はどうかというと、ここがはっきりしない。一体何のためにオリンピックを開催するのかというレガシーが重要なのです。オリンピックはロスアンゼルス以来商業主義に陥ったという批判を受け、大会の目的はより良い遺産を開催都市や国、世界に残すことだというふうに憲章を変えました。これをうまく利用したのがブレアで、地方と中央の格差問題を見事に解決しました。その結果、ロンドンは世界の都市環境総力で首位に返り咲き、ポジティブな影響を世界に示すことができました。

日本は2030年以降、超高齢化と少子化で生産年齢人口が減っていきます。同時に経済も縮退する。そこで2020年の節目にどれほど未来に向けた投資をし、東京を魅力的な都市にするかが課題になります。オリンピックの開催はその梃子であるべきですが、その議論が顕在化しない。政府がその問題に出した答えは生産年齢人口の集中ですが、しかしそれだと地方は衰退するんですね。私は日本が考えなければいけないのは自然を資本財としてきちっと評価し、災害や持続的な未来に役立てることだと思います。

今年1月のダボス会議では、今後の社会は第4次産業革命が起きて、従来のような生産年齢人口とGDPの密接な関係はなくなるという議論がされました。AIとかICTとかの先端技術が経済成長の主導権を握るが、それは必ずしもモノを作るという意味での生産性に寄与しないというのです。では第4次産業革命に対応した国作りはどうするか。この点私は、日本は集中策を考え直して、環境を指標にしたレガシーを世界に主張すべきだと考えます。理由は江戸です。江戸は当時100万の人口を抱えていましたが、ペルリが来るまでコレラのような大きな伝染病が流行したことはありません。公衆衛生上、自然をフィルターにした見事な再生循環の都市を作った。この江戸モデルこそが世界に主張できるレガシーだと考えます。

私は新国立競技場の審査員になって性能要求水準書を書き換えさせました。何に力を入れたかというと内苑と外苑に対する敬意です。例えばザハ案等の国立競技場案に全くみられなかった。実は明治神宮は内苑の内向きの渦巻の真ん中にあって、外苑の外向きの渦巻の一番外に運動施設があります。内苑は日本人の心の気高さ、外苑は日本人をより頑強にするためのあり方を表しています。明治神宮と内苑、外苑がいかに東京の緑にとって大きい意味を持つかを考え、ここからしっかりとしたメッセージを発信することが大切です。都心はコンパクトに、郊外では新たな田園都市を構想する。つまり農と住が一体化した世界に囲まれたコンパクトな新たな東京像を作るといった哲学です。そこで私は新国立競技場をデザインするときは、緑や木など自然の素材を活用し、内苑、外苑を作った先輩たちの考え方をしっかり踏襲すべきだと考えたのです。そうした方向は必ず第4次産業革命に寄与します。自然環境と人間の文明が見事に共生する江戸の遺伝子を継承した都市像を世界に示す。それがポジティブなレガシーを示すことになると考えます。

ありがとうございました。

卓話 『米国大統領選挙の行方』平成28年10月3日

佐藤 則男様

Strategic Planners International, Inc. President
佐藤 則男様

僕がアメリカに行こうと思ったのは16歳の時で、ノーベル賞をもらった湯川秀樹がコロンビア大学で教鞭をとっている写真を見て、その大学へ行きたいと思ったのと、もう一つは国連のハマーショルド事務総長がコンゴの平和解決に行く途中、飛行機事故で亡くなるんですが、これも僕の夢になり、国連事務総長になりたいと思ったからです。

僕は大統領選挙が好きなんです。アメリカの大統領は大きくて庶民的な存在だということを高校時代、ケネディが暗殺されたときに知りました。アメリカに渡ってすっかり大統領選挙のとりこになり、それからずっと大統領選挙をみて、いろいろ書いたりしています。

今年の大統領選挙はもはや大統領ではなく小統領を選ぶような感じになってしまいました。その原因がトランプにあることは明白です。大体ビジネスマンが大統領になって会社のように国を治めるのは不可能です。ビジネスは利益と販売を最大にするのが目的ですが、国にこの単純な論理を当てはめるわけにはいかない。トランプは議員にも知事にもなったことがなく政治は全く知りません。だからヒラリーと政治で論争できない。経済政策を述べても、この人はビジネスを知らないんじゃないかと思うことばかりです。

昨日CNNでトランプの1995年の税金の申告書が見つかったという特報が流れました。920億円ぐらいの赤字を計上し、それで18年間、税金を払わずに過ごしたというのです。これは前から大体想像はついていました。というのは不動産投資は非常にトリッキーなんですね。いくらでもからくりがある。この点は、これからヒラリーが調べると思います。

どうしてアメリカ人が彼を候補に選んだのかが日本ではわかりにくいですね。アメリカの中産階級は1960~70年までは6~7割を占めていましたが、’80年以降のバブルとかで二つに分かれました。お金持ちになった中産階級と、うだつの上がらない中産階級です。そしてうだつの上がらない白人のブルーカラーは勉強しないです。酒ばかり飲んで遊んでいる。そして彼らが働かない理由は、移民が仕事を奪ったからというのです。そういう失業者、ブルーカラーのワシントンに対する根強い反発をトランプはうまく捉えたんですね。

アメリカの選挙は大統領でもなんでも戦略家がいて選挙の戦略を立てます。またポリティカルリサーチが2~300のサンプルをつかまえて、どういうメッセージが効果があるか調査し、コミュニケーションマネージャーが演説を作る。ただトランプにはこのスタッフがいません。彼は激戦区だけ選んで遊説し、それでいいんだという考えです。ところでトランプの支持者は若い人が多いんです。この前大学生と話していてびっくりしました。ヒラリーには今のアメリカは変えられない。だからトランプを支持する。どんな悪いことをしようと彼でなければならないというんですね。

アメリカが抱える問題、大変大きいですが、オバマさんがしっかりやっているのが唯一の救いです。

ありがとうございました。



▲ PAGE TOP