つなげよう、つながろう、新しいやりかたで (Connect and Be Connected in Innovative Manners)

国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

文字サイズ変更



卓話

2016年3月

卓話『紀伊國屋書店の今昔 ―紀伊國屋書店の目指すもの』平成28年3月28日

高井 昌史様

(株)紀伊國屋書店 代表取締役会長兼社長
高井 昌史様

紀伊國屋書店は田辺茂一が創業してからまもなく90年です。茂一の家は新宿の今の場所で薪炭問屋をやっておりましたが、茂一は小さい頃から本屋をやるんだと言って、慶応を出てすぐ本屋に変えてしまいました。

新宿本店を建て直すとき、茂一は本屋で文化を起こすんだと言って、その中層の一番いいところにホールを作りました。紀伊國屋ホールです。これが紀伊國屋書店が単なる本屋から発展する礎になったと思います。

紀伊國屋書店では毎年、紀伊國屋演劇賞を発表しております。今年の1月で50回になりました。今まで受賞した方は井上ひさしやつかこうへい、野田秀樹、仲代達矢、三谷幸喜、草笛光子等々、錚々たる方々です。演劇人には憧れの賞ということです。また、紀伊國屋ホールは、新劇の甲子園との評価もあるようです。

今の読書離れは大変厳しくて少子化やスマートフォンの普及などの影響が考えられます。昭和の時代、三島由紀夫、川端康成、松本清張、司馬遼太郎、その前には鴎外、漱石がいて、本が国民の一番の楽しみでしたから、作家はよい本を出し出版社も取材費を潤沢に出した。今、作家に印税が入らず、出版社がへたり、取材もままならないとなると作家が育たない。これが一番問題だと思います。私は中学受験では奇問難問を出さないで、本を20冊読んだら20点あげる、100冊読んだら合格させてあげるぐらいの対応を考えないといけないと思います。国語ができないと英語ができないですよね。算数も理科も社会も基本はみんな国語。国語力を小さいうちから育てるにはやはり読書です。朝の授業前に読書をしようという運動は全国の小・中学校でやっていて、その実施率の髙い県は秋田、福井とか富山です。文部科学省の学力テストで優秀な県も同様なんです。やはり読書と学力は相関関係があるんですね。朝読の実施率を高め、図書室を充実することが必要だと思います。

紀伊國屋書店は海外に27の店舗があって、ドバイは1800坪と新宿本店の1.5倍あります。ここにはアブダビ、カタール、サウジ、エジプト、イラン、イラク、アフガニスタン辺りから本を買いに見えます。国づくりをしている人たちですから欧米の大学を出たインテリで、英文のデザインや建築の本、ビジネス書が多く売れますが、私はアラブ圏の国の人たちにはもっと日本の本を提供したいと考えています。今、色々争いがありますけど、本を読むと世の中が平和になるような気がします。ある出版社の社長と話したことですが、日本のコミックを難民キャンプの子供たちに無料で配りたい。それにはアラビア語に翻訳しないといけないので、今いろんな方にお願いしています。

日本にはいい作品があって、村上春樹だけでなく、よしもとばなな、小川洋子、桐野夏生などが海外でも喜ばれています。出版不況なんて言ってないで、こういったものを海外に出していきたい。それで文化と平和が繋がるんではないでしょうか。

ありがとうございました。(敬省略)

卓話『変わること 変わらないこと -テレビ最新事情-』平成28年3月14日

和崎 信哉様

(株)WOWOW 代表取締役会長
和崎 信哉様

私は昭和43年にテレビの世界に入って48年間過ごし、そのうち28年間は現場のディレクター、プロデューサーとして、主にスペシャル番組を作り続けてきました。その代表作の一つがNHK特集「行(ぎょう)~比叡山千日回峰~」で、比叡山の山中を毎夜40キロ1000日間走り回り、祈りを捧げる修業僧を特集したものです。もう一つの代表作はNHK特集「シルクロード」で、この番組で初めて外国のカメラが新疆ウイグル自治区タクラマカン砂漠に入りました。砂漠で遭難しかけるような厳しい状況での取材、撮影でしたが、約60日間の取材を3年間に4回もやれたのは公共放送の懐の深さだと思います。

私は定年まで現場で番組を作りたいと思っていましたが、50歳を超えたとき、マネージメントをやれということでメディア展開を担当することになりました。BSのハイビジョン放送と民間の衛星放送WOWOWが始まったのが1991年。その2年前にはNHKの衛星放送が始まっていました。さらに2000年からは放送のデジタル化がスタート。2011年、日本では地上波もBSも、すべてのアナログ放送が終わりました。その頃、量販店では、これがデジタルテレビです、壁掛けです、液晶ですと華やかに宣伝されアナログからデジタルへの変換が進んだわけです。そしてデジタル化が完了して2~3年もしないうちに次の新しい技術がスタートしました。それが超高精細の4K、8Kテレビですが、実はこれはまだ地上波もBSも放送していません。今年衛星4Kの試験放送が始まり、2018年に本放送を始める計画で、これからどの事業者が4K放送を始めるのか、今はそのスキーム作りの状態です。

私はメディアというのは技術革新の中で次から次へと変化していくものだと考えています。私がテレビ局に入ったとき、ドキュメンタリーの制作は全部フイルムです。それがビデオになりハイビジョンになり、今やデジタルハイビジョン2Kの高精細の世界。今後、更に4Kの超高精細の世界へ移っていく。

そんな中で私が申し上げたいのはコンテンツ、中身の重要性です。私がWOWOWに行ったとき社員に言ったのは、ほかのメディアとの徹底した差別化と上質さの追求です。その結果、私どものオリジナルドラマシリーズである「ドラマW」は、社会的な問題を真正面から取り上げる作品を制作しています。例えば「ママは昔パパだった」というドラマは、男として育てられた子が実は性同一性障害で、本来は女であるということで性転換したというお話です。そのときに起こるいろいろな摩擦をホームドラマとして描きました。性同一障害は今でこそ病気だと認識されていますが、5、6年前まではホモやレズという性の嗜好と混同され、恐らくNHKでもなかなか通らなかった企画だと思います。

「大企業のリコール隠し」「小児の臓器移植」さらに「ガンの特効薬」と、上質にこだわり社会と向き合う、それがテレビ局WOWOWの原点です。

これからの放送は技術革新でますます進化していくでしょう。我々はそれを取り入れ、その上に新しいテレビ文化を築くわけですが、私が40年前に作った「シルクロード」のDVDが今でも感動を持って見られるように、今後もコンテンツの重要性は変わらないし、変わるべきではないと思うのです。

ありがとうございました。

卓話 『人生のエッセンス ー心のメイク リハビリメイクー』平成28年3月7日

かづき れいこ様

歯学博士、公益社団法人 顔と心と体研究会 理事長
かづき れいこ様

私が提唱する「リハビリメイク®」とは、傷跡などをカモフラージュ(=隠す)ことが目的でなく、自分の傷を受け入れ精神面も含め社会復帰するためのメイクという意味がこめられています。

1970年代、あざや傷跡をカモフラージュする、また化粧をするという心理的効果を医療のなかに組み込んだメディカルメイクアップが、イギリスの赤十字病院で行われて以来、欧米では各病院で積極的に取り入れられ、医療の一環として専門の機関をもつ病院も増えています。しかし隠すことに主眼を置いたカバーメイク法とは異なり、リハビリメイクは①簡単(短時間)②崩れない(水や汗に強い)③べたつかない④一般と同じ化粧品を使用するなどの特徴を有しています。

従来型のカバーメイクでは、患者が患部を厚塗りのメイクにより隠しているということでネガティブな心理に陥りやすく、それが社会復帰の妨げとなる場合も少なくありません。リハビリメイクは、患部の完全な被覆を必ずしも最終的な目標とせず、その目的はあくまでも患者が満足しうる美をもたらして、患者の社会復帰を促すことです。従って患者の年齢や顔立ち、生活環境、性格、服装の嗜好などを把握した上で、次段階のメイクに移行するため、初診時には単にメイクの技術よりもカウンセリングが重視される場合もあります。ときには、患部を隠すことだけに砕身してきた患者に対し、個々の長所を強調し、患部に応じたアンチエイジングメイクや流行の顔作りを加味したメイクをすることにより、患部へのとらわれを解消させます。多くの患者において、メイク技術を導入することにより、自己のボディイメージを変容させる、あるいは受容させることが社会復帰の近道であると考えています。これは精神医学における一種の行動療法・認知療法に通ずる部分が少なくないでしょう。

近年、客観的には理解し難い外観に対する悩みを有する患者も増えてきています。その中には醜形恐怖症や摂食障害などの範疇に属する患者も含まれており、彼・彼女らにリハビリメイクを適用する際には、可能な限り精神科医・臨床心理士と連携をとりながら行います。

顔は人体の中でも最も特殊な部位の一つであり、その美醜や外観的特徴は、その人に対する包括的印象の大部分を与えかねません。また私たち人間は、外観により他者を判断したり、されたりしまいがちであることを無意識に感じとり、結果自己の美醜や外観的特徴に対して他者以上に過敏となりがちです。外観の醜状による社会活動の障害は、社会や周囲の偏見が助長する場合もありますが、むしろ患者本人の自己に対する認知の問題による部分が少なくありません。メイクという非侵襲的な手段により、認知の変容がもたらされ、その結果社会復帰が促進されるのであれば、外科手術などのような侵襲的な手段によりもたらされた変容およびその結果よりも、その効能は大きいものと考えています。

しかしリハビリメイクは、その対象が外傷・皮膚疾患・その他内科疾患・精神疾患あるいはそれらを複合的に有する患者であり、従って医療従事者との連携は必須になります。医学的治療の最終段階、あるいは前段階、中途段階においても、それを適用することは可能です。リハビリメイクは従来の医療と競合するものではなく、医療と実社会との境界部分に位置するものであり、これは現代社会においてはQuality of Life(=生活の質)向上のために必要不可欠の領域であると考えています。



▲ PAGE TOP