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国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2015年5月

卓話 『「香道」とその可能性』平成27年5月25日

山田眞裕様

香雅堂 代表取締役社長
山田眞裕様

 香道は和の香りとは言いますが原料は古来すべて南蛮渡来の輸入品です。それがいつ日本に入ってきたのか、文献に残る一番古い例は日本書紀です。推古帝3年(西暦586年)の夏、木の塊りが淡路島に流れ着き、島の人が焚き木にしたら異様な匂いがしたので、それを朝廷に献上したという記述があります。

 飛鳥、奈良の時代、お香はもっぱら宗教儀式に使われました。薬師寺で五穀豊穣を祈念して行う法要、最勝会(さいしょうえ)で上げる金光明最勝王経の中に、このお経を上げるときに焚くお香のレシピが書いてあるんですね。薬師寺では先頃大講堂で500年ぶりに最勝会を行ったんですが、そのお香を私がレシピに基づいて作りました。ただそれは芳香というようなもんじゃなくて、ものすごい強い香りです。それが大講堂に立ちこめ天蓋のように覆っている。だからお香は国を守ってくれるそういう存在=守護神を下すきっかけとして考えられていたことがその時、納得できたんです。

 当時お香は香であり薬でした。中国では飲むために作られたお香もあって楊貴妃がそれを飲んでいたというレシピが残っています。それを再現してみると8種類ぐらいの香料を使っていて、大半は胃腸薬、整腸剤みたいなものです。その中で唯一香りが外に出てくるだろうと思えたのが麝香(じゃこう)。麝香鹿のオスが婚姻期に出すフェロモンで、ものすごく強い。それがかなりの割合で含まれていました。楊貴妃は西イラン系の女性で体臭はそんなに強くなかったはずで、そこへ麝香の香りがほんのりしたら多分ものすごく魅力的な香りだったろうと想像します。

 源氏物語の世界、お香は大きな役割を果たしていました。宮人が自分なりの香りを工夫して衣服や髪や手紙や扇子に焚きしめる。それが次の武士の時代になると香木単体で楽しむ文化に変わります。室町時代、京都の東山に建てた慈照寺銀閣で、足利義政は能や和歌、お茶やお香などの知識を持つ人たちを集めて一種の文化サロンを構築しました。いわゆる東山文化ですね。そこに集う人々は専門以外にも造詣が深かったから、お茶を嗜む人がお香も嗜む。そういう中でお茶もお香も芸道として整理され、一定の作法に則って楽しむということが行われるようになったと思います。

 東山文化を原点とする香道の流派は、志野流という武家に伝わる流派と御家流というお公家さんに伝わる流派の二つです。志野流が一子相伝なのに対し、御家流は完全相伝制、伝授を受けた人が次の伝授をまた出せるというシステムのため、大変派生が多くなりました。

 香道の本質は香木の香りを知ることに始まりそれを極めることで終わると言われますが、極めた先の世界がどういうものかを説明するのは難しい。そういう世界を日本ならではの文化としてよその国に伝えることで子どもの教育に活かしたいといわれていますが、その素材として香道が知られるようになればいいと思います。

 ありがとうございました。

卓話 『デザイン新時代の幕開け』平成27年5月11日

畑山一郎様

株式会社 未来技術研究所 代表取締役
畑山一郎様

 皆さん、こんにちは。私は工業デザイナーで自動車のデザインをずっとやってきました。その車が売れるように、少しでもカッコよく使いやすくデザインしてきたわけですが、そういう仕事のやり方が大きく変わろうとしています。BI、AIという言葉は紀元前、紀元後のBC、ACをもじったBefore Internet、After Internetの意味で、ここにしっかりと境目があるということです。BIからAIになり、インターネットは今や社会インフラのプラットフォームになりました。この影響はデザインの世界では「モノ」のデザインから「こと」のデザインが重視される結果となって表れています。例えば車をいくらカッコよくデザインしても渋滞も排気ガスも減らないですね。ですから人やモノが移動することのデザインをしないと間に合わなくなっている。また20世紀は部分最適のデザインでしたが、最近は社会の全体最適をデザインしなければいけなくなっています。それが「社会に寄り添うデザイン」です。その例として今世紀になってから私がやったことを3つほど紹介します。

 まずフィリピン。マニラは公共交通がほとんどなく、多くはジープニーというジープ改造バスみたいなものとトライシクルというオートバイにサイドカーを付けたものが走っています。排ガスも劣悪です。それで私はADB(アジア開発銀行)と一緒になってフィリピンの交通事情に合ったシステムを作るため、日本のリチウム電池を使ってエンジンを電気モーターに変えました。これでトライシクルのドライバーは職を失わずに済みます。今、試作車が作られていて現地で生産される予定です。

 カンボジアではアンコールワットなどの遺跡を目指して世界中からの観光客が増えています。ここも公共交通がなく、交通手段はほとんどがオートバイでキャビンを引っ張るルモーモトというものです。これもひどい排ガスを出しています。私はここでもADBと一緒にルモーモトを電気に変えるプロジェクトをやっていて、来年本格普及が始まります。

 次は国内です。千葉県の柏市では5年前から三井不動産が柏の葉キャンパスシティという街の開発を始めました。スマートシティ、コンパクトシティとして、この街の交通、移動を賢く、心地よくしようというものです。2030年を想定した完成像をビデオにして4年前の東京モーターショーで発表しました。その中ではシースルーのソーラーパネルで発電して電気の乗り物に充電するエネルギーの地産地消や、交通手段のシェアリングを前提に自動運転のコミューターであらかじめプログラムした所まで移動できる姿をイメージしています。つまり街全体で移動の手段の選択肢がいろいろ持てることを提案しているわけで、そのための社会インフラをデザインさせていただいているわけです。

 デザインは遅ればせながらではありますが新時代に入りました。それはロータリークラブの精神に近付いたということでもあると思っています。

 ありがとうございました。



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