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国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2020年1月

卓話『現代のロシアと日本の関係』令和2年1月27日

駐日ロシア連邦特命全権大使 ミハイル・ユーリエヴィチ・ガルージン閣下

駐日ロシア連邦特命全権大使 ミハイル・ユーリエヴィチ・ガルージン閣下

私は何年か日本に在住しておりますが、マスコミが日本国民に対して提供するロシアのイメージが、客観的ではなく、先入観に基づくものなのではないかと感じており、特に今年の1月に大手新聞で読んだ記事が私の心を傷つけました。日本が守っている、忠実である価値を無視しているという表現を使ってロシアのことが書かれていました。ロシア国民、ロシア国家は、同じ価値観に忠実であるということを申し上げたいと思います。人間の命への尊敬、命を一番大事にすること。さらに家族の価値や人権の尊重、言論の自由、集会の自由などを大事にしています。さらに各国民が、自分が歩むべき発展の道を選ぶ自由を大事にしています。そして自分が守っている価値観を他国に押し付けるという政策をとっていません。もし自分の価値観でもって、他国に歴史、宗教、伝統などを無視して価値観を押し付けることがアメリカをはじめとする西側の価値であるとすれば、我々はそのような価値は持っていないし、持ちたくもありません。

今現在国際社会では、国際テロ対策、持続的な経済発展の確保、麻薬の不法取引、海賊、大量破壊兵器拡散の脅威など、経済的・軍事的に強力な国であっても、一国の力だけでは対応できないような問題が目立っており、世界各国が集団的に一緒になって対応すべきだと考えます。プーチン大統領は、2015年の国連総会で、国際テロと戦うための地球的な連合「Global Coalition」を提案し、すでに5年が経過していますが、なかなかアメリカや西側から同意をいただけない状況が続いています。

20世紀の30年代にロシアが、ナチスドイツに対して、集団的に連合を作って対応しようと提案をしましたが、当時もフランス、イギリス、アメリカは拒否をしました。結局1939年にナチスドイツがポーランドに侵攻し、全人類にとって大悲劇となった第二次世界大戦がはじまったわけです。歴史の教訓を忘れてはなりません。

プーチン大統領は、今の国際関係について議論し、人類が直面している脅威、挑戦にどう対応するか、紛争をどう防いだらいいかを議論するために、創設75周年を記念する国連の常任理事国首脳会談の開催を提案しました。既に中国とフランスが同意しており、アメリカとイギリスも同意してくれると期待しています。

今年は第二次世界大戦主戦75周年、祖国大戦争での勝利の75周年にあたる年ですから、特に首脳会議が重要だと思っています。近年、中近東で国際テロが台頭していると同時に、残念ながらヨーロッパでナチスの思想が台頭し始めており、この警戒すべき状況に、国際社会が統一して対応しなければならないと考えます。

日本国民の皆様に理解していただきたいのは、ロシアは全く違う価値観を持つ国ではなく、世界各国と同じような価値観を持つ国であるということと、そして今現在の国際問題を協力して解決すべきだという立場から、色々なイニシアチブを打ち出している国であるということです。

安倍総理とプーチン大統領は27回の首脳会談を行っており、大変好ましく効果的な首脳対話が今の日露関係の原動力となっています。政治的に信頼を作り上げる対話で、そして政治、国際問題解決、安全保障、経済、科学技術、文化交流を大きく促しています。2018年から2019年にかけて日露相互交流年が行われ、両国民を接近させる相互交流となりました。今年から来年にかけては、両国の各地域の文化や伝統などをお互いに紹介することによって、友好や信頼、理解をさらに強化し深める目的で、地域交流年を予定しています。

ロシアと日本の協力の潜在ポテンシャルはとても膨大で豊かです。エネルギー安全保障の分野で見てみますと、ロシアはここ数十年に渡り、西洋でもアジア太平洋地域でも、信頼できるエネルギー供給国であるということを示しました。ヨーロッパとの関係において色々な難しい側面や時期があったにも関わらず、一度も政治的な理由でガスの輸出を停止したことはありません。日本との関係を見ますと、日本で消費されているLNGの7%から8%をロシアが輸出しています。さらにロシアの北極圏にあるヤマル半島で天然ガスを開発し、LNGを日本に輸送するという大規模なプロジェクトを、ロシアのノバテックという民間のエネルギー企業と、三井物産とJOGMECが成立させ、日本は2023年あたりから毎年200万トンのLNGを追加輸入できるようになりました。日本とロシアの経済協力の有望な将来性を示す一例です。さらに、すでにロシアと日本の企業は共同サプライチェーンを作り始めています。

さらに国際関係では、ロシアと日本が国連の事務局と協力して、中央アジア諸国の麻薬取締機関を強化するために動いています。アフガニスタンの麻薬取締官や、麻薬捜査のための検知犬を育成するために協力しています。つまり日本とロシアは、全人類にとっての大問題のために協力をしているということです。

日露関係は、幅広く包括的な発展をすることにより良好な環境が作られると考えています。良好な関係作りが必要であるという考えがあるならば、お互いに日露関係を取り巻く環境を大事にすべきではないかと思います。日本のマスコミが憶測だけで情報を流すのではなく、問題があれば外交ルートを通じて冷静に対話するという方法を使って対処すべきではないかと思います。

日本は大事な隣国、大事なパートナーです。そして国連をはじめとして国際舞台で、もっともっと関係を進めていきたいと考えています。

ありがとうございました。



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