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国際ロータリー第2750地区 東京六本木ロータリー・クラブ The Rotary Club of Tokyo Roppongi

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卓話

2019年12月

卓話『視界不良の世界と日本の課題』令和元年12月2日

元外務事務次官 齋木 昭隆様

元外務事務次官 齋木 昭隆様

天皇陛下は国民の幸せをお祈りする立場で、政治から超越した立場です。即位の1ヶ月後にローマ教皇が訪日され「戦争のために原子力を使うことは犯罪以外の何物でもない。ここで起きた出来事を忘れてはいけない。」という有名な演説をされました。カトリック教徒のトップに立たれる宗教指導者として、祈ることが本来の任務だと思いますが、同時に、バチカンの元首でもあるローマ教皇の折々の発言の中には政治的なメッセージが込められており、天皇陛下とローマ教皇は違うのだと感じました。

我々は今難しい時代に置かれているということを、最近つくづく感じています。今の世界は、我々が慣れ親しんできた国際秩序、アメリカのリーダーシップが崩れつつあります。「アメリカ・ファースト」というトランプさんの政治により「不安定な多極化」へと進行しているのではないかと認識しています。

今我々が直面している様々な現実をまとめました。

トランプさんの政治はかなり乱暴です。来年の大統領選挙で再選を目指しており、共和党を支持する人の90%はトランプさんを支持していますが、民主党を支持する人は早く辞めろと思っています。しかし民主党を代表してトランプさんに対抗する優良な大統領候補になる人がまだ決まらず、民主党の候補者が団栗の背比べを続けていると、ますます全体の情勢はトランプ有利に動くだろうと言われています。政治の世界は必ずしも見通しが効くわけではなく、スキャンダルがどこまで大統領の立場を弱めることになるのかということも、外務省の現役の人たちは注意しながら見ているのだろうと思います。

中国の国家主席は1期5年、2期10年間務めるのが今までのルールでした。しかし任期が撤廃され、習近平国家主席は、しばらくは中国13億人のトップとして君臨していくだろうと言われています。習近平さんになってからの中国は、胡錦濤主席の時代に比べると、中国の存在感を際立たせる動きをしています。毛沢東は国を創り、鄧小平は国を豊かにした。自分は国を強くする。「中華民族の偉大な復興」をスローガンとして掲げ、中国という国を強く大きくしていくことが、習近平さんの目標です。達成するには、従来の10年間という任期では短いわけです。また中国は2049年に中華人民共和国100年目という節目を迎えます。その年を目指して世界のナンバーワンになるということが国家目標として明示的に書かれています。その時に台湾がどうなっているかということも非常に気になりますが、今の香港の情勢を見ると、中国の思惑通りにならないところもあるのではないかと思います。

12月12日にイギリスで総選挙があります。ジョンソン首相は何としてでも1月末という期限をもってヨーロッパから出ていくと言っています。ヨーロッパから出ていくということは、両方にとってプラスになるのか。イギリスはもともと大陸とは一線を画すという伝統のようなものもあり、半分くらいは出ていくというほうに票を投ずると思います。たくさんの企業をイギリスに展開している日本にとっても、その結果は非常に気になるところです。

地理的に日本にとってもっとも近い朝鮮半島の南と北、韓国とは最近上手くいっていません。北朝鮮とは全く何も動きません。北朝鮮はアメリカと直接対話したことにより日本や韓国を相手にしなくなりました。かつて小泉総理が初めて訪朝しましたが、なぜそれが実現したのか。北朝鮮はアメリカと直接テーブルにつきたいという気持ちをずっと持っていましたが、ブッシュ大統領が「悪の枢軸」ということで名指しで演説をしたため、アメリカとの対話は遠のいてしまいました。直接会い、自分たちの国の安全をアメリカに保証してもらいたいということで、ブッシュ大統領と仲の良かった小泉総理というルートを使おうということが、当時の北朝鮮の計算でした。しかし今は安倍総理がいくら無条件で会いますと言っても関心を持ちません。おそらくアメリカとの関係がおかしくなったら日本に顔を向けてくると思います。安倍総理は自分がいる間に何としてでも核問題や拉致問題を解決したいと言っていますが、声高に言うと足元を見られてしまいますので、静かに交渉をすることが大事なのではないかと思っています。

中東は日本のエネルギーの供給源として非常に大事です。日本は中東の色々な国からエネルギーを入れていますが、かつては天敵同士だったサウジアラビアとイスラエルが手を組み、イランに対抗しようという不安定な情勢が続いています。日本はどの国とも良い関係ですが、万が一アラブボイコットのようなことが起きた場合、経済は大変なことになります。中東情勢が早く安定するように、日本なりに外交努力をしなければならないと思います。

自由で開放的な社会を維持するのか、抑圧的で閉鎖的な社会を代表する国々の軍門に下るのか、民主主義対専制主義、あるいは多国間の協調主義を我々として維持できるのか、それとも自国第一主義を掲げる国に結局なびいてしまうのか。このような中で日本はどうすればよいのでしょうか。安倍政権は7年目です。戦後外交の総決算として、日露関係においての北方領土の返還と、北朝鮮との関係の正常化が目標です。しかしどちらも相手があることなので簡単にはいきません。そこで安倍総理は、中国との関係の強化に努めはじめており、日中関係は完全に正常化したと言っています。しかし尖閣諸島に中国の船が毎日のように領海に入ってくる、航空自衛隊も中国の飛行機が来るとスクランブル発進をしなければならない。このような状態が恒常化している中で、正常化したと言っていいのかという議論もあります。

また日本が直面する課題として、少子高齢化があります。老人に対する介護は非常に手厚く、長寿化するのは当たり前だと思いますが、国の選択、国民の選択としてどのようにすべきかを考えなければいけません。また季節外れという言葉が当てはまらないほどの気象状況による大雨洪水も課題の一つです。治山治水は国土保全の基本中の基本ですが、どれくらいしっかり政権としてやれるのか。来年度の概算要求で割り当てられた1兆円ではおそらく足りないと思います。新しいダムや堤防を造ることより補修することにお金をかけなければ、来年も同じことになるのではないかと思います。そして近隣諸国との関係はなかなか難しい。安倍政権として一体何を残すのか。外交でレガシィを残すのは非常に難しく、私はどちらかというと内政面で何かをやったほうがいいと考えます。

日本が直面する課題において何を問うのかが非常に大切だと考えます。

ありがとうございました。



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